ウィザーズの舞台裏に迫る!第11回:アシスタントGMが語るウィザーズのドラフト戦略

「ドラフトで指名する選手は昨年の八村塁選手のように長年チームと共に成長していく逸材」

ワシントン・ウィザーズがお届けするインタビューシリーズ! 第11回はウィザーズのアシスタントGMのブレット・グリーンバーグ氏。グローバルポッドキャストでの内容を記事化。シェパードGMの右腕としてどんな仕事を担っているのか、そして11月に控えるドラフトに向けた日々について聞きました。

——まずはアシスタントGMという仕事に就くことが出来た経緯を教えていただけますか?

多くの運がありました。それが正直な答えです。幼少時代からバスケットボールが大好きだったのですが、ひどい選手でした(笑)。それでも高校の時からバスケットボールを仕事にしたいと思っていました。コーチになりたいと思った時期もありました。

バスケットボールに関わる関係者に連絡を取り続け、多くから得たアドバイスは「プレーヤーになるのが難しければ、スチューデントマネージャーになれ」でした。その道を忠実に辿り、高校時代からディビジョン3の大学バスケ部のスチューデントマネージャーを務め、大学でもデューク大のバスケ部で同じ役割を担っていました。

そこでは映像分析のノウハウを学び、独学でもサラリーキャップの仕組みを勉強していました。大学卒業後にはどうにかしてキャリアをスタートさせたいと思っていたところ、私が学んだ映像解析プログラムをNBAのチームが取り入れ始めるという幸運が重なり、マイアミ・ヒートにインターンとして加入することが出来ました。

そして今は上司であるウィザーズのトミー・シェパードGMとは大学時代に一度お会いしていたのですが、彼と連絡を取り続け、ヒートとのインターンを終えた後に私が駆使していた映像解析プログラムを取り入れるという連絡を受けました。残念ながらお亡くなりになってしまいましたが、素晴らしい人格者であったフリップ・ソーンダース氏がこのプログラムへと切り替える決断をして、私はアシスタントビデオコーディネーターという役職で長年応援していたウィザーズの職員になることになりました。

ウィザーズでは12年目となりましたが、これだけ長く同じチームで働けるのはスポーツ界では稀なので本当にラッキーであることに尽きると思います。ビデオルームで働いていた時でもトミーや当時のグランフェルドGMはどんな質問にも答えてくれました。NBAでデータがどんどん活用される時代となり、私はビデオルームから数年前にデータとサラリーキャップを扱う役職に移り、今もここで働けていることを幸せに思います。

——グリーンバーグさんの肩書きはアシスタントGMで戦略アナリティックス担当ということですが、普段はどのようなお仕事を担当されていますか?

トミー・シェパードGMの下でフランク・ロス氏、ジョニー・ロジャース氏や他のフロントスタッフと一緒に常にロスターをどう向上できるか、そして長期的な戦略を立てて、適切なデータや情報を有効に使い決断を下すことが出来ているかを確認している日々です。

——シーズン中、日常の業務で最も忙しいのはどういった仕事でしょうか?

シーズン中であれば、アナリティクスの観点から言えば業務は二種類に分かれています。1つ目は現場との連携でコーチ陣が次の対戦相手に向けて準備する上で必要とするデータの全てを収集し、提供すること。二つ目はフロントとの連携でドラフト、フリーエージェント市場、トレード、具体的にいいますとトレード期限日に向けてデータを用いてロスターをどう向上していくかを検討する日々です。シーズン中はその時期によってどちらかの業務がより忙しさを増します。

——アナリティクスが肩書きにも入っていますが、常に数字やデータを見る日々なのでしょうか?

間違いないですね。私達にとって情報は愛すべきものなのです。その大きな部分は数字を用いたデータですが、決断を下していく上では手元に入るスカウティングレポート、メディカルレポート、様々な関係者との電話からの全ての情報を洗い出します。それらを踏まえて、その時々にベストな決断を下すためにチーム一丸となって動いています。

——一度延期が発表されたドラフトですが、現在予定されている11月中旬の実施日までは約7週間となりました。ドラフト前の今、どういった役割で日々動いているのでしょうか?

私たちは常に映像を見ています。通年も多くの映像を見るのですが、今年はさらに時間があるため今まで以上に数を見ています。世界中にスカウトが散らばっているため、多くのミーティングを行い、コミュニケーションを図っています。

スカウトらは一年中、選手達を追いかけて生のプレーをずっと見てきました。そして私たちはその映像を見て、データモデルに当て嵌めて数字から分析されることとスカウトの目による分析を比較します。そこでデータが割り出す分析に何か隠れていないか、または数字には表れないスカウトの見解をしっかり話し合います。二つの視点を組みわせて、とことん話し合います。いつも以上に時間があるため、非常に効果的にこのプロセスをこなすことが出来ていて、これまでで一番ドラフトに向けた準備が出来ていると思います。

——信用出来ない数字やデータって存在するんでしょうか?

コンテキストが鍵なのは間違いないです。状況に当てはまる数字かどうかをまずは理解することが重要です。数字は計測しようとしていることとして認識していれば正確なのですが、あなた自身が計測しようとしていることに当てはまるのかどうかを理解しなくてはいけません。チーム単位での1試合平均の得点数やリバウンド数もアップテンポな攻撃を繰り広げるチームでは変わってきますし、その分失点も多くなります。そういった状況ではエフェシエンシーで測ります。1ポゼッションごとの得点、または失点、NBAでは100ポゼッションごとに見ることも多いと思います。

もしディフェンス力に長けたチームと戦っているときには、より多くのリバウンドを取られているかもしれませんがそれは相手のリバウンド力から来るものなのか、またはシュートミスを多く誘われているのかを見極めなくてはいけません。リバウンド力だけを測る場合はリバウンドの数ではなく、その確率を見て分析します。データは基本的には自分たちが計測したいと思うことには信用できると思いますが、そのコンテクストに合ったものなのかを正確に理解した上で出しているかが重要になります。

——少し話題をチームに変えますが、現在ウィザーズが最も必要としている戦力はどういった部分だと思いますか?

私たちは間違いなくこれからも努力を惜しまないハイキャラクターな選手を補強していくつもりですが、若い選手達が成長をし続けることが鍵になると思います。八村塁選手を始め、皆さんも期待を寄せる若手が揃っています。彼らは努力を惜しまず、その育成を手助けするスタッフも優れた人材が揃っています。彼らが更なる成長を来年遂げることが大きくなります。

昨シーズンはディフェンスに苦しんだということは隠しようのない事実だと思います。ディフェンシブ・エフェシエンシーではトレード期限以降はNBA14位でしたが、シーズンを通してでは29位に終わってしまいました。シーズン中に成長を見せたのは良かった点でオフェンスに関してはトップ10に多くの時期は入っていました。ディフェンスが改善点なのは明らかですが、若い選手達が成長することがそのままチームの向上に自然と繋がっていくと思います。

——ドラフト戦略の中で一番優れた選手を指名するのと、必要な選手を獲得すること。この決断についての考えを教えていただけますか?

完璧な答えは存在しないと思いますが、どの指名順位であってもその時に残っている最も優れた才能を取るのが通常だと思います。チームが必要とする選手は年によって変化する可能性が高く、ドラフトで指名する選手は昨年の八村選手のように長年チームと共に成長していく逸材になります。必要としている選手を取ることは目先の穴埋めになってしまう場合があるので、チームを継続的に強くしていこうと思う場合はその時点で最高の選手を取るべきだと思います。

——八村選手を指名する際には彼の今後のパフォーマンスを大学時代の数字からある程度予測出来るものだったのでしょうか?

彼のキャリア全体、そしてその成長の進行具合などを考えました。彼には数字には表れない努力を惜しまない性格的な要素もありました。私がこれまで出会ってきた選手の中でもその部分は非常に高いものを持っていたと思います。選手を見る時にはそのキャリアを通して活躍できるか、長期的な視点を持つようにします。大学のスタッツの中でもNBAでそのまま通用する数字も中にはあると考えています。それを分析し続け、スタッフ一丸となって正確な予測を立てられるように日々取り組んでいます。そのためには情報を多く収集し、外れるというリスクを出来るだけ下げようとしています。

——ドラフトロッタリー終了時にシェパードGMは候補は20-30人いると話していましたが、現在はどのような状況でしょうか?

私たちはドラフト候補になる選手を全て調査しています。もちろん現時点では所持している指名権しかありませんのでこれから9位、37位に指名する可能性のある選手に絞っていきます。ドラフト当日にはどんな可能性が浮上してくるかはわかりませんので、まずはドラフト全体をしっかり把握することが大切です。昨年を例に挙げると、ドラフト前日は全体9位指名権しかありませんでしたが、当日にトレードで全体42位指名権を獲得しました。もし9位だけに注力していたら、42位に誰を指名するかの準備は出来ていなかったと思います。

さらにはドラフト指名から漏れた選手がのちに戦力となる可能性もあります。ドラフトが終わった後には第二のドラフトが来るようなものです。指名を受けなかった選手達とも連絡を取り、ツーウェイやエキシビット10契約を提示したり、サマーリーグに招待したり様々な可能性を模索していきます。

先ほども話しましたが、より多くの情報を持つということを重要視しているからこそドラフト候補は全員把握していきます。絶対指名出来ないという選手がいても、3-4年後または7-8年後に制限なしFAとなるかもしれません。未来のことを考えるのはクレイジーと思うかもしれませんが、私たちにとっては非常に重要なことです。私たちは全ての選手達のグラスルーツから引退までを常に追っています。情報があるに越したことはありません。

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