NBA.com/Japan ウィークリーコラム
嘘のない人間ドラマ
By Masasyoshi Niwa

サンズは今、全米中にそのファンを、拡大しつつある。

皮肉にも、その理由の一つは、アマレ・スターダマイヤーボリス・ディーオウの出場停止問題。

 
 
第6戦は振るメンバーが揃うサンズ。特にゴール下の要であるアマレの復帰はサンズにとって好材料である。
Nathaniel S. Butler/NBAE/Getty Images
第4戦の残り18秒、スティーブ・ナッシュロバート・オーリーにファールされて、コートの外へ弾き飛ばされる。そのときに、ベンチを離れたとして出場停止となったのだが、同情論が根強い。

もちろん、ルールはルール。コート上でトラブルが起きたとき、そのときに出場していない選手がベンチを出ることは、固く禁止されている。もうルールができて10年以上経っており、誰もが知るそのルールを破ったのだから、処分も当然。

だが、ファールがサンズベンチに近い位置で起きており、「チームメイトが厳しいファールを受けたことで、咄嗟に体が動いてしまうことなど止められない」と、サンズのマイク・ダントーニヘッドコーチ(HC)も話した通り、自然な反応を制御するのは難しく、そんな反応に対して出場停止という重い決断が下ったことに、多くのファンは同情を感じている。

ただ、それ以上に、サンズに対してなんのファン感情を持たなかった人を惹きつけたのが、第5戦での戦いぶりだ。

スターダマイヤーとディーオウを欠いたことで、当然のようにサンズは選手が足りない。ラジャ・ベルは47分、ショーン・マリオンスティーブ・ナッシュはともに46分間もプレイ。最後は足がフラフラになりながらも、ボールを追った。

そうなることは分かっていた。だからこそ、リードを許しては勝ち目がないと、サンズは、試合開始と同時に走りまくる。前半を終えたときは、11点をリードした。

対して、スパーズがじわりと迫ったのが、第3Q。残り5分52秒では5点差にまで追い上げた。このとき、サンズの足が止まってしまう。リバウンドに対する反応が、明らかに悪い。前半から飛ばしたことによる息切れが、目に見えて現れた。

しかし彼らは、並ばれかけて、競馬の世界で言う「二の足」を使う。そこから2分余り、自分たちも得点できなかったが、相手にも得点を許さない。勝負どころと読んだのだろう。「ディフェンスが出来ない」などと酷評されてきた彼らが、必死に守った。そして、耐えに耐えると、先に点を奪って流れを変えた。この一連の攻防に胸を打たれたファンは多い。

ただ、ここでの無理がたたったのかも知れない。

 
プレイオフ屈指の好カードであるダンカン率いる堅守スパーズ対ナッシュ率いる攻めのサンズの結末に注目である。
Jesse D. Garrabrant/NBAE/Getty Images
 
第4Q、残り5分18秒で79対71とリードしたが、それから動きが鈍る。3分余り得点を挙げられず、スパーズが徐々に差を詰めると、残り1分54秒で81対81の同点にされ、それからサンズが、再びリードを奪うことはなかった。

マリオンは、「精一杯戦った。あれ以上、どうすればよかったのか…」と、声を落とす。

ナッシュもまた、「試合を振り返れば、『ああすればよかった』というポイントはいくらでもある。それぞれの選手が、あと少しの力を出すことが出来たなら…。でも、その力はもう残っていなかった」と、小さな声で胸の内を晒した。

プレイ振りから、コメントから、持てるものすべてを出したと言う感じが伝わってくる。負けたとはいえ、ファンは、彼らのプレイから、バスケットの、プレイオフの素晴らしさを感じたに違いない。

もちろん、アリーナに詰めかけたフェニックスのファンが、スターダマイヤーとディーオウの代わりとなって、手負いのサンズを支えたからこそ、スパーズをあそこまで追い詰めることができたに違いない。

そんな彼らの前で再びプレイするには、サンズはアウェーで戦う第6戦でスパーズを倒さなくてはならない。

その第6戦には、スターダマイヤーとディーオウが戻ってくるが、彼らは、第5戦でチームメイトが必死に戦う姿を、どんな思いで見守っていたのだろう。歯ぎしりをし、血が滲むほどに拳を握り締めたに違いない。その悔しさは、第6戦で晴らせるのか・・・。

明日無き戦いに対して、トップアスリートが、1プレイ、1プレイに集中。そこから生まれる嘘のない人間ドラマは、純粋に素晴らしい。


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