NBA PLAYOFFSコラム
レイ アレン 〜激闘のシーズンを終えて〜
By Masayoshi Niwa

レイ アレンは、鼻をすすった。同時に、声が変わる。

 
 
レイ アレンのシーズンは終わった。ファンはソニックスでのキャリア継続を望んでいるが、それは本人も同じだ。
Andrew D. Bernstein/NBAE/Getty Images
惜しくもスパーズに2勝4敗で負けた夜、プレスカンファレンスの席で、淡々と質問に答えていたアレンだが、最後のショット(決まれば、逆転。が、リングに嫌われる)について聞かれると、「しばらく、頭から離れないかも。あれが決まっていれば・・・、なんて考えるのかな」と笑みを見せたあと、「負けたというより、シーズンが終わってしまったということがショック。1年のいい思い出が、走馬灯のように駆け巡った・・・」そう話しながら、声をつまらせた。

その瞳には、涙が滲む。無情のブザーが鳴り響いたあと、ソニックスの選手たちは、これまでの試合同様、センターコートに集まった。

最後のハドル。そこで何を話したのかとアレンに問えば、いっそう声は、くぐもった。

「何を話したのかは、覚えていない。ただ、自分としてはこれまでで最高のシーズンを送れた。それを支えてくれたチームメートに、お礼を言いたくて・・・」

そのあと、「最後の・・・ハドル」と言いかけて、言葉が途切れがちになった。「・・・これで、最後なんだと思ってね。このメンバーでハドルを組むのは、本当に最後だと感じたんだ」

ソニックスには、9人のフリーエージェントがいる。アレン自身もそうだが、おそらく半分はチームを離れることになる。才能ある選手が集まったとは言い難いソニックス。その彼らがここまで勝ち上がったのは、まさにチームワーク。しかしその類い稀な結束も、この日で終わる。

「いいチームだった。みんな、本当に仲が良くて。こんな環境の中で、バスケットを出来たことが、本当にうれしい。それが明日からはどうなるか分からない。感情的にもなるよ」

彼はかつて、バックス時代の2001年にカンファレスファイナルまで進んだことがある。その時はアレン アイバーソン率いるシクサーズにゲーム7で敗れているが、あの時でさえ、これほど感情的にならなかった。それを問われれば、改めて言った。

「これまでで、最高のチームメートに囲まれた。だからこそ、今はそれが終わるのかと思うと、言葉にならない」

1年ほど前だったか。アレンは、「ジェローム(ジェイムス)は、チームのガンだ。トレードされた方がいい」と話して、二人は一発触発の状態になった。そのコメントが新聞に載ったとき、ジェームスは、アレンをトレーニングルームに呼び出して、問いつめた。しかしそれは、ジョーンズを焚き付けるためにアレンが、仕掛けたこと。ふがいないプレーを続けているのは自分だと、逆にジョーンズは頭を下げた。ジョーンズは、今でのその新聞記事を部屋に貼って、時折自分を見つめ直している。

 
来季同じようなシーズンを過ごせるかどうかは分からないが、今季のソニックスはシアトルのファンに素晴らしいアピールをした。
Otto Greule/Getty Images/NBA
 
昨年のシーズンは、アレンが故障から復帰してから、ラシャード ルイスが「ボールが回ってこない」と言い出して、チームの和を乱した。そのとき、間に入ったのはコーチではなく、アレン自身がルイスに「自分を犠牲にすることの大切さ」を説いた。それは数ヶ月に及んだが、先に触れたハドルで放心状態のアレンを後ろから支えたのは、ルイスだった。

今年のチームは、そんなことをブロックのように積み上げて、出来上がったチーム。チームはアレンを中心にまとまった。口うるさい親父のようなところがあるアレンだが、チームメートがアレンに引き付けられたのは、その飾らない人柄か。自分を決して、スーパースターとして見ていない。特別な計らいも求めない。

サクラメントで行われたプレイオフ1回戦のゲーム4。アレンはキャリハイの45点を挙げて、チームを勝利に導いた。その夜、チームはシアトルに深夜移動。夜中2時頃家に戻ったアレンは、玄関を開けて驚く。犬の糞が、その辺に散らばっていたのだ。彼は、それを一人できれいにして、そのあと、次の日がゴミの日であることに気づく。家中のゴミをまとめて、道路までゴミの箱を運んだ。空は、うっすらと白み始めていた。

普通なら、お手伝いさんを雇ってやらせる仕事。彼ぐらいの選手なら、誰でもそうしている。しかし、アレンはゴミ出しもするし、普段から掃除もする。「自分は、何ら特殊な人間じゃない」と言う。

プレイオフが始まってから、アレンは試合後、プレスカンファレンスに呼ばれることが多くなった。多くのスーパースターは、それを好む。5分ほど座って質問に答えれば、そのまま帰ることが出来るからだ。ロッカーでメディアに対応すれば、質問が途切れることがない。しかし、あれはキングスとのゲーム2の試合前だろうか。「プレスカンファレンスは好きじゃない。一般的な言葉ばかり聞かれるからね。それよりもここに残って、君たちと話をしたい。ソニックスをずっと見てくれている記者たちは、もっと絞り込んだ質問をしてくる。そういう質問の方が面白いから」

キングスを破って2回戦突破を決めた夜、アレンはプレスカンファレンスを断って、ロッカーに残った。そして、最後の最後まで、メディアにつき合った。50分はそこにいただろうか。ソニックスのPRが気を利かせて、「この辺で・・・」と、何度も質問を遮ろうとしたが、アレンは座ったまま動かなかった。

涙のプレスカンファレンスが終わったあと、アレンの元へ、顔見知りの地元記者が並んだ。それぞれが、「ありがとう」と声をかける。彼らの瞳にも涙が浮かび、それに対してアレンは、ただただ、一人一人と握手を交わした。おそらく言葉を口にすれば、涙が頬をつたってしまったのだろう。

残留を望むアレンだが、契約交渉はオールスターまえから暗礁に乗り上げている。彼がソニックスに戻ってくる確率は50%程か。

アリーナには、こんなサインを掲げたファンもいた。「ALLEN, WHEREEVER YOU GO, THANKS!」(アレン、どこに行こうが(どこと契約しようが)、ともかくありがとう)