クリス・ウェバーの引退が決まった。これまで、何度もコートを離れたが、その度に復帰。今季もシーズン途中からウォーリアーズに加わったものの、かつての動きを披露できず、2月29日に左ひざを怪我すると、それが直接の引き金となった。
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素晴らしいキャリアを過ごし、デビューを飾ったチームへ戻って引退を決断したウェバー。
Rocky Widner /NBAE/Getty Images
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今の選手の中では、一番インタビューなどで多くの時間を過ごした選手でもあるだけに、少し寂しい気もする。
初めて話をしたのは、1996-97シーズンのこと。状況が状況だっただけに、鮮明に記憶している。 当時、ブレッツ(現ウィザーズ)でプレイしていたウェバーは、インディアナに遠征に来ていた。 試合前は、インタビューのチャンスがなく、試合後、ロッカーへ。しかしその日の試合は、オーバータイムで負けており、ロッカーのウェバーは、明らかに不機嫌そうだった。
「やばいなあ」
正直足がすくみ、やめようかとさえ思った。
ただ、ドキドキしながらも質問を始めると、笑みを交えて、実にフレンドリーに接してくれる。以降は、試合前も試合後も、いろんな話をするようになった。
キングスに移ってからは、チームがプレイオフの常勝チームとなり、取材機会がさらに増える。毎年10月になるとサクラメントに行き、キャンプから取材をすることも多くなった。おかげで、ウェバーが移籍しなければ行くこともなかったであろうサクラメントの街にも、随分詳しくなった。
キングスへのトレードが決まった1998年、半ば放出という印象があったため、彼がサクラメントに向かう機中で「涙を流した」という話をしてくれたのは、2001年のプレイオフ前。
サクラメントの空港の周りは、今ものどかな田園風景が広がるが、それが飛行機から見えてきたとき、彼は「涙が止まらなくなった」という。
「そのときは、どうしたら再びトレードされるかばかりを考えていた」
ただ、リーグのお荷物といわれキングスも、彼の移籍によって上昇チームに。だからこそ彼は、そんな胸の内を後になって晒すことも出来たのだろう。
2004年には中国で行われたプレシーズンゲームにも帯同。その中国ゲームでは、ロッカーが狭いため、メディアはその中に入ることが出来なかったが、少しだけ話を聞かせてもらえるか? と聞けば、「外じゃあ、落ち着かないから、中に入れ」と、チームの広報にも彼が話を通してくて、インタビューをさせてくれた。
まあ、とはいっても、基本的には誰にでも、快く接してくれる選手。 が、一度だけ、彼が地元メディアに激怒しているシーンを、テレビで見たことがある。付き合っていた彼女のことが新聞に載り、その話を聞こうと集まったテレビ局などに、猛烈な勢いで抗議したのだ。
「私生活には、踏み込むな」
あの時も、胸が痛くなった。
実は次の日、サクラメントでのインタビューを予定していたのだである。 報道によれば、「当分、インタビューを拒否する」とのこと。果たしてその翌日、練習場に行けば、依然、多くのメディアが待機していたものの、ウェバーはそれを無視してロッカーに消える。
がっくりとしたが、そのとき、広報が近づいてきて、ウェバーに話を聞きたいのか? というから、「そう」と返せば、その広報は、他のメディアが引き上げたのを見計らって、ロッカーからウェバーを連れてきてくれた。
メディアとは話をしないと聞いていたから…と、会話を切り出せばウェバーは苦笑した。 「プライベートを報じようとするメディアとはね。バスケットの話なら、拒否する理由はないよ」
インタビュー後、地元記者の重鎮、マーティン・マクニール記者と駐車場で話していた。そこに、ウェバーが車で通りかかる。二人の姿を見つけると、窓を開けて、「じゃあな」とクラクションを鳴らして走りすぎていった。
残念ながら、結局、タイトルとだけは縁がなかった。
ミシガン大時代も、あっと一歩で涙を飲む。キングス時代も、毎年のようにファイナル候補に選ばれながら、レイカーズにそれを阻まれる。
一番有名なのは、2002年のカンファレンス・ファイナル──キングスの2勝1敗で迎えたゲーム4。勝利をほぼ手中にしていたが、ロバート・オーリーに逆転3ポイントブザービーターを許す。その後キングスは、再び3勝2敗と勝ち越したが、最後の2試合を落とし、この年も涙を飲んだ。
あの時、オーリーのシュートをブロックしに行ったのはウェバー。おそらくあと、10センチ。秒数にして、1秒あるかないか。そのわずかな差が、シリーズを結果的に決した。
ちなみに、あのカンファレンス・ファイナルのゲーム7は、サクラメントまで取材に行ったが、生で試合を見た中では、個人的にベスト3に入る最高の試合だった。
さて、引退後はどうするのかと思ったが、正式に引退を発表した翌日、もうTNTのスタジオに姿を見せ、解説者に収まっていた。
TNTとは、NBAを放送する局としては、チャールズ・バークリーらを擁し、絶大な人気を誇る局。他のテレビ局からも、声が掛かったというが、彼の人当たりの良さ、頭の回転の良さ、それをTNTが逃すはずもなかった。
少なくとも、現場からは離れず、これからも接する機会があると思うと、少し嬉しい気もした。




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