NBA.com/Japan ウィークリー・コラム
ロケッツのマーチ・マッドネス
By Masasyoshi Niwa

“マーチ・マッドネス"

アメリカでは3月のことを、そう表現する。春の甲子園と同じように、全米規模の大学バスケットボールトーナメント(NCAAトーナメント)が行われるからだ。

 
 
個人ではなく、チームプレイで22連勝を飾ったロケッツ。
Nathaniel S. Butler/NBAE/Getty Images
実際にトーナメントが始まるのは今週20日からだが、先週末にはカンファレンスごとのトーナメントも行われていて、それがまた、盛り上がった。

15日は、ビッグ・イーストの決勝行われ、ピッツバーグ大学がジョージタウン大学を下すというアップセットを演じたが、目に付いたのは、パトリック・ユーイングJr.。2003-04にインディアナ大学に入学したが、システムに馴染めず、2年で父親が卒業したジョージタウン大に転向。昨季までは、平均得点4.1点という平凡な選手だったが、今年はジョージタウン大の6マンとして活躍し、決勝でも8点を挙げるなど存在感を示している。

スイングマンの彼は、父親のプレースタイルとは程遠いけれど、顔つきはそっくりで、懐かしさを覚えた。

そういえば、イリノイ大学では、マイケル・ジョーダンの長男、ジェフ・ジョーダンも今年からプレーしている。チーム内でそれほど多くの役割を与えられているわけではないが、やはり彼には注目が集まり、今年はチームが苦戦しているにも関わらず、何度もその試合が全米中継されたほど。

イリノイ大は、予想に反して、ビッグ10カンファレンスのトーナメントでは、決勝まで進んだが、全米6位のウィスコンシン大に破れている。その試合では、8分間に出場したジョーダン。得点は2点だった。

彼は、大学から奨学金をオファーされながらも、一般入学でイリノイ大に進学。今後彼が、父親のように優れた選手になるかどうかは分からないが、90年代のNBAを沸かせた選手たちの子供たちが、こうして大学生にまでなったことには、時代を感じずにはいられない。

ところで、やはり大学の試合というのは、その情熱たるや、NBAを上回るものがあるが、技術的にはまだまだである。無駄なファールが多く、フリースローが入らない。

アトランティックコースト・カンファレンスの決勝では、クレムソン大学とノースカロライナ大学が対戦したが、ともにフリースローの確率が、50%台。

クレムソン大などは53.8%で、解説者も苦言を呈していた。コートサイドリポーターから、「でも、彼らは毎日100本のフリースロー練習をしているんですよ」と、フォローが入ったが、「100本で50%程度なら、200本は練習しなければダメだ」と、厳しい言葉が飛んだ。

そういう試合を見た流れでNBAを見ると、「やはり、上手い」と妙に感心してしまうが、大学生のルーズボールに対する執念などを見ると、それもまた、なんとも言えず、感動させられるのである。

前置きが長くなったが、同じようなパッションを感じたのが、16日に行われたレイカーズとロケッツの試合。

ウェスタン・カンファレンスで同率首位に並ぶチーム同士の対決は、さながらプレイオフ。同時に、ロケッツが連勝記録を「22」まで伸ばすかどうかも、注目された。

1週間ほど前に日程を見たときは、このレイカーズ戦が確実に鬼門となると思われたが、先週のホーネッツ戦で、パウ・ガソルが足首を捻挫して、欠場。ロケッツもヤオ・ミンを欠いているが、これで戦力的には五分となった。

試合は、予想通り接戦となり、前半でロケッツが大きくリードしたものの、第3Qに入るとレイカーズが反撃に転じ、あっという間に追いついてしまった。それ以降は、拮抗した戦いとなり、第4Qの終盤になってロケッツが突き放して勝利を収めたが、まさに手に汗握る好ゲームだった。

ガソルの欠場により、イン&アウトのオフェンスが影を潜めたものの、やはりコービー・ブライアントを柱とするレイカーズのオフェンスは、オプションが多い。一方、ヤオ・ミンを欠くものの、ロケッツは勝っていく中で、ヤオ抜きの戦い方を学んだようである。

これでロケッツは、カンファレンスのトップにも躍り出た。22連勝が始まる前は、カンファレンスの10位に甘んじ、プレイオフ進出も危ぶまれたチームの快挙である。

最後に負けたのは、1月27日のジャズ戦だが、それまでチームは、本当に不安定だった。負けが込んだ12月などは、ヤオが「このチームには、全く集中力がない」などと、珍しく胸の内を晒したもの。1月に入って、勝ちを重ねられるようになったが、ここまで勝つことなど、誰も予想できなかった。

様々な苦境を跳ね返しての連勝でもある。ヤオが足の骨折で離脱したのは、チームが12連勝を収めた試合。その時点で、ヤオ中心のゲームプランは、根本的な変化が求められたのに、その後もチームは勝ち続けた。

ロケッツが、ボンジ・ウェルズを手放し、ボビー・ジャクソンを獲得したのは2月21日だが、そのときチームは9連勝中。トレイシー・マクグレディなどは、「せっかく、チームがいいリズムでプレーしているのに、どうしてトレードが必要なのか」と、首を振ったことを思い出す。

1ヵ月半近くも勝ちを続けていれば、すべてが順調というわけではないけれど、いずれも、チームの根幹を揺るがしかねない逆境を、今のロケッツは跳ね返した。

さて、彼らはプレイオフを勝ちぬけるかどうか。

これだけ勝っても、専門家の声は厳しく、「ヤオがいなければ、どこかで息切れするだろう」という見方が大勢を閉める。

それも分からないではないが、レイカーズ戦でブライアントを封じたシェーン・バティエーのディフェンス、同じくレイカーズ戦でキャリアハイの31点をマークしたレイファー・アルストンの成長。それらを目の当たりにすれば、のっけから否定も出来ない。

ロケッツの選手らが持つ、大学生さながらのひたむきさを、信じてみたい気もする。