どうしても予定通りに事が運ばない。誰にでもそんな日はあると思うが、15日のシクサーズ対ソニックス戦の取材は、まさに脱線の連続となって、結局、元の軌道に戻れなかった。
キー・アリーナに向かう車中、考えたテーマは、シクサーズの今季。3連勝のスタートだったが、3連敗を喫して、勝敗は5分。トピックスの入り口としては、無難だったのだが…。
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シクサーズの中心は、7試合で平均29.4得点を稼いでいるアイバーソンだが、サポート選手の起用法に変化が見られる。
Terrence Vaccaro/NBAE/GettyImages
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そのときなぜか、記者が一人もいない。そういうときこそ、取材がしにくいものだが、レイ・アレンが奥で、一人のんびりシクサーズのビデオを見ていたので、「ビデオを一緒に見ながら、きっかけを作ろう」と、彼の横に腰を下ろした。
しかしながら、アレンとは、松坂大輔の入札の話になってしまった。前日、レッドソックスが51.1ミリオンで落札したニュースがスポーツニュースなどで繰り返されており、彼も知っていた。
ポスティングのシステム、まだ契約したわけではないこと、単に交渉権を獲得したのだと説明すれば、目を丸くする。
「そのために、5000万ドルも払ったのか?」
アレンはそのまま、シュート練習から戻ってきたラシャード・ルイスにも声を掛けた。
「おい、知ってるか? レッドソックスが交渉権のために5000万ドルも払ったことを」
ルイスも知っていた。さほど野球には興味がないと話していたが、「あるところにはあるもんだな。うちのアリーナも建ててくれないかな」と笑いを誘う。
ソニックスは、シアトル近郊に新しいアリーナの建設が決まらなければオクラホマ・シティへの移転が囁かれている。そんな背景があるだけに声に出して笑えないジョークだが、いずれにしても、話はそこから、ヨーロッパ、アジアのバスケット事情に流れていった。
アレンは、メジャーの人気と比較して、NBAの状況を分析する。
「NBAの場合、マーケットは国内というより、世界全体に向いている。ヨーロッパの人気拡大は、順調だ。アジア、特に中国が、次のマーケットだろうな。シャックも中国のシューズメーカーと販売契約を結んだだろう? バスケット関係の資本は、まだまだ中国に投資されるんじゃないかな」
雑談のつもりが、無視できない話になって、思わずメモを取る。
しかし、話はまた元に。
「しかし凄いなあ。5000万ドルかぁ。そんなに凄いのか、松坂は?」
こちらが頷けば、「来年、彼の試合を見てみるよ」とアレンは言う。
結局、そこで腰を上げて、再びシクサーズのロッカーに向かったが、「あっ、シクサーズについて聞き忘れた」と足を止めたとき、もう目の前にはウェバーが立っていた。
実は、彼もまた、松坂の入札のことを知っていて、目を丸くした。そしてファン目線で、「凄い、凄い」を繰り返す。
そのまま成り行きで、野球の話へ。今年は、彼がファンでもあるタイガースがワールドシリーズに進出した。そのネタで盛り上がっているところで、なんとかバスケットの話に戻そうと、こう振ってみた。
「3-4年前、まさかタイガースに先を越されると思わなかったでしょう?」
怪訝な顔をするので、聞き方を変える。
つまり、キングスでプレーしていたころ、自分がNBAファイナルでプレーするのと、タイガースがワールドシリーズへ勝ち進むのと、どちらの方が可能性として高かったか、ということを聞きたかったのだ。
質問を彼も理解したが、苦笑するかと思いきや、真顔になった。
「そういえばそうだよなあ。彼らはあのとき、連続でシーズン100敗を喫していて、俺たちは毎年のように、ファイナルを目標としていた。う〜ん、まさか先を越されるとは…」
そのときトレーナーから、マッサージとテーピングの順番が来たことを知らされる。彼が立ち上がったとき、またシクサーズに関する質問をするのを忘れたことに気づいたが、今さら聞けなかった。
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シーズン中、ソニックスのゲーム観戦に何度か訪れるイチロー。写真は2005年のもの。
Jeff Reinking/NBAE/GettyIMages
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なんでここにいるの?
互いに、全く予期しない中で顔を合わせたのだから、同時に笑ってしまった。
この日、シアトルは暴風雨。交通渋滞に巻き込まれて、ソニックスの選手の到着が遅れていることなど、たわいのない会話を最初は交わしたが、結局は松坂の話に。
オフレコなので書けないが、彼のリアクションは、多くの人と同じように、驚きがあった。
さて試合は、シクサーズが96対90で振り切った。しかし、試合も奇妙なゲームで、シクサーズにはラッキーな面が多々あった。
ただ、気になったのは、ウェバーが接戦だったにもかかわらず、第4Qにプレーしなかったこと。試合後、シクサーズのロッカーに行けば、当然彼は不機嫌だった。
他の記者が去ってから、「今の心境を、ここでは言えないでしょう?」と問えば、苦笑いしながら頷く。
ウェバーは今季、7試合のうち、3試合で第4Qでプレーしていない。彼が、この状況を受け入れられるはずがない。
膝がまだ影響しているのかと問えば、
「それはない。去年に比べれば、ずっといい」
そのあと、ゆっくりとシャワーを浴びているアイバーソンを待った。彼のコメントがあれば、なんとかシクサーズの今季をまとめられると思ったが、最後にまた、つまづいてしまう。
アンドレ・イゴダーラが、「ヱビスジーンズ」をはいていたのだ。
もちろん、日本発だが、アメリカでは、「バーニーズ」などの有名セレクトショップで売られている。
ジーンズのことを彼に問えば、もちろん彼はそれを知って履いているから、話が盛り上がった。かつて、ヱビスジーンズの山根社長にあったことなどを伝えれば、さらに話が繋がってしまい、その間にアイバーソンの囲み取材が始まって、そこに加われなかった。
結局、この日取材できたのは、ウェバーが戦力として疑問視されていること、それに本人が不満を持っていること、そして、イゴダーラがヱビスジーンズを履いていること。
これでシクサーズファンは、納得してくれるだろうか…。




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