選手でも、ついつい試合中、顔をほころばせてしまうことがあるのだなあ、と思った。それが例え、1点を争うような状況でも。
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勝利だけを求められるNBA世界はタフだ。しかし例え敗れたゲームだったとしても、「楽しかった」と自ら表現できるゲームは、観ているものを引き込む。
Jesse D. Garrabrant/NBAE/Getty Images
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そこまで心を奪われたのは、展開だけではない。選手が心底ゲームを楽しんでいると感じられたからである。長くなるので試合の描写は最小限に留めるが、2回目のOTが終わった瞬間、ベンチに戻ったポール ピアースは、笑っていた。
セルティックスは残り6秒まで3点をリードしていたが、カイル コーバーが奇跡的な3ポイントを決めて、シクサーズが同点に持ち込んだ。普通なら、呆然とするところ。顔を伏せたくもなる場面。しかしピアースは、「楽しくて仕方がない」といった表情を浮かべていたのだ。
試合後、彼も言った。「負けたことは悔しい。でも、楽しかった!」
1回目のOTが終わったときは、クリス ウェバーとアレン アイバーソンが相好を崩した。同点で残り3秒。リバウンドをとったウェバーは一瞬、タイムアウトのポーズをしかけたのだが、結局はとらなかった。実際はもう1回残っていたのだが、彼の過去が必要以上に彼を慎重にさせたのだろう。
NBAファンなら誰もが知るように、彼は大学時代の1993年、もう残っていないタイムアウトをコールして、大学選手権の優勝を逃したという苦い過去がある。残り3秒ならタイムアウトを取って最後の攻撃が出来る。しかし、ウェバーは確信がなかった。ベンチを見る時間もない。おそらくベンチもウェバーの挙動に目を取られているうちに、タイミングを逸したのだろう。
やがてブザーが鳴り響き、1回目のOT、終了の合図。そのとき、ウェバーに近づいたアイバーソンは、大笑いをしてた。何を話しているかはもちろん分からなかったが、当然、タイムアウトのことでからかいを入れていたに違いない。
「13年経って、ようやくお前もバスケットを学んだな」とか…。
ベンチではウェバーも笑っていた。それが不謹慎に見えなかったのは、彼が真剣であるが所以に犯したミスだからだろう。結果的には勝ち越しのチャンスを逃したかもしれないが、やはりアイバーソンからも、ウェバーからも、「楽しくて仕方がない」という、瞬間を感じたのである。
この日ウェバーは31点、13リバウンド。アイバーソンは33点、10アシスト。ともに出場時間は50分を越えていた。一方のピアースも、18点、10アシスト、9リバウンドと、わずかにトリプルダブルに届かなかったが、死力を尽くした充実感が、そこにはあった。こういう試合は、こちらの胸まで本当に熱くなる。例えそれが、テレビ観戦であっても。
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自らを追い込み、自責の念に駆られ、そしてさらなる高みを目指す。スーパースター達に課せられるハードルは想像以上に高い。
Brian Bahr/Getty Images
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まだチャンスが十分にあったキャブスは、フリースローのミスなどで自滅しかけたが、オフェンスリバウンドをとるなどして、生き残る。残り6秒、ボールはトップ オブ ザ キーの位置でフリーだったジェームスに渡ったが、なんと彼はそのボールをパスしてしまったのである。決めていれば逆転の場面…。パスを受けた選手も唖然として、ゴールにドライブするもターンオーバーを犯して試合は決まった。
テレビで大きく映し出されたジェイムスの顔、一際厳しかった。試合が終わった瞬間、アンソニーの顔が見る見るうちに綻んだのとは対照的に、彼は自分を責めているようだった。
「なぜあそこでパスをしたのか…」
ジェイムスはこの日、15本中7本のフリースローを外している。24点、11リバウンド、9アシストの活躍だったが、完全燃焼できなかったのは明らかだ。充実感などない。それがあそこまで彼の顔を険しくさせたのだろう。
彼には、勝負弱いとのレッテルが張られている。その日、試合を放送した米ケーブルネット局の「ESPN」(アメリカのスポーツ放送局)は、試合が残り1分を切った頃、こんなデーターを紹介した。 残り10秒で同点、もしくは逆転シュートを決めた回数――。「アンソニーが11回中7回であるのに対し、ジェイムスは15回中2回しか決めていない(いずれも、NBA入りして以来)」
言うまでもなく、残り10秒といえばクラッチタイム。その選手の勝負強さが出る場面。しかし、アンソニーがこれだけの確率を残しているのに、一方のジェイムスは13回もミス…。まさかあの場面、自分の勝負弱さに脅えたわけではあるまいに。今後、トラウマとならぬことを祈りたい…。
話は脱線するが、1月22日の日曜日、物凄い試合が2試合もあった。1試合は、コービー ブライアントが81点を挙げた試合。1試合の個人得点としては、ウォルト チェンバレンが1962年に記録した100点ちょうどに続くもの。打つも打ったり、シュート回数はなんと、46回を数えた。
2試合目は、フェニックスで行われたソニックス対サンズ。ダブルOTにまでもつれ込んだ試合は、152対149! でソニックスが勝ったが、両チーム合わせて記録した3ポイントシュートは、なんと32本。こちらはNBA記録だそうだ。また、両チームの合計得点「301」は、1995年にマーベリックス対ロケッツが記録した「303」点に次ぐスコアだった…。
しかし、こんな素晴らしい2試合も、スポーツニュースではトップを飾れなかった。実はこの日、NFLのリーグチャンピオンシップが行われていたのだ。特に、西海岸で午後5時から行われたソニックスの試合は、午後3時半から行われていたシーホークスの試合ともろにぶつかった。ソニックスがダブルOTを制したころ、シアトルのスポーツファンは、シーホークス、初のスーパーボール進出に酔っていた。
醍醐味を感じるほどの素晴らしいゲームであったが故に不運である。選手もファンも、ある意味。


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